バレエ「眠れる森の美女」見どころ・聴きどころ

札幌大谷大学・札幌文化芸術劇場hitaru連携事業 アートプログラム2020 第1回

札幌大谷大学芸術学部音楽学科

学科長・千葉潤教授

1.バレエ「眠れる森の美女」初演

バレエ「眠れる森の美女」プロローグ付き全3幕

初演:1890年1月3日、 帝室マリインスキー劇場

原作:シャルル・ペロー

台本:イワン・フセヴォロジンスキー

振付:マリウス・プティパ

作曲:ピョートル・チャイコフスキー

オーロラ:カルロッタ·ブリアンツァ

デジレ:パーヴェル・ゲルト

リラの精:マリーヤ·プティパ

カラボス:エンリーコ·チェケッティ

レジュメより

※劇場用年間予算の4分の1を投入した超大作。出演者550人

ギャラの話し➡オーロラ姫役➪2万ルーブル   作曲家:チャイコフスキー➪3,000ルーブル     これだけの差があるとの話あり

千葉教授の留学中には、「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」はけっこう上演しているが 「眠れる森の美女」はそれほどない。規模が大きく巨大なバレエ。 台本・振付・作曲の三人が密接に話し合い傑作になるべくしてなった気がする。と話されていた。


・イワン・フセヴォロジスキー 帝政ロシア末期を芸術で支えた文化官僚

・名門公爵家の出身。 パリのロシア領事を務めつつ、
フランス文化 (特にフランス革命以前の宮廷文化)にいそしむ。
アレクサンドル三世即位後、 1881~99年まで帝室劇場管理委員会 の責任者(その後はエルミタージュ博物館館長を務めた)
劇場改革:
①私立劇場の設置を認可。
②優れたロシア人舞台芸術家の賃金引き上げ。
③バレエ専属作曲家制度の廃止。


芸術文化を通して帝政ロシアの国際的イメージを向上させ 、皇帝の権威やロシア文化の意義を高めることに専念した。
・この後、《スペードの女王》《くるみ割り人形》《イオランタ》《ライモンダ》等を続々と制作させた。

 

レジュメより

国が決めたものしか上演できなかったものを取っ払った。バレエの専属作曲家も廃止したなど、色んな形で状況を変えた。と話されていました。

・「眠れる森」に秘められたもの

フセヴォロジスキーのアイデア:”ルイ14世時代の様式で、
リュリ、バッハ、ラモーの精神で”=フランス宮廷文化の様式化(チャイコフスキーもモーツァルト·ロココ音楽に傾倒)
*ルイ14世(1638-1715) :フランス絶対王政時代の全盛期の 国王で、その権威から“太陽王”と呼ばれた。
自らバレエを学び、 臣下の前で披露。
1661年に王立舞踊アカデミー創立(世界初のバレエ学校バレエの礎)
「眠れる森の美女」の寓話性:オーロラ姫の眠りから100年後 に再興される第3幕のフロレスタン王国=”ヨーロッパ最後の君主国”  
帝政ロシア賛美のアレゴリー(寓意)?

 ・ 初演時は、リラの精(=神)が王国に恩寵をもたらす存在と して描かれたが革命後に削除。リラ/カラボスの対立が強調。

レジュメより

2. 「眠れる森の美女」構成と特徴

・プロローグ「洗礼式」→第1幕 「成人式」→第2幕「出会い」 →第3幕「結婚式」=各幕が“女性の愛と生涯”を辿る構成。
・プティパの振り付け:地上的な存在および邪悪なカラボスには
マイムや性格的舞踊→リラの精や王家の人物には古典舞踊。
・初演時のジャンル名は「Ballet-Féerie」 (バレエー夢幻劇)
「夢幻劇」=機械仕掛けや花火等を駆使した幻想的な場面を展開する演劇とバレエの融合(リラの精が宮殿を森に変える 場面、船に乗って森を移動するパノラマ等)=総合芸術的。
音楽の特徴:①リラ/カラボスの対立を表現する交響的展開、
②オーロラの叙情的なアダージョ、
③童話的キャラクターの性格的音楽、の宮廷舞踊の様式化。

レジュメより

 「ピーターライト版」の特徴~

  • 通常は、第2幕フィナーレでオーロラが目覚めた後、 すぐに二人が結ばれて幕になりますが、 それでは、 次の第3幕ですぐに結婚式を迎えてしまい、二人の 愛が深まる暇がありません。

・ピーターライト版では、第2幕の締めくくりに、 ヴァイオリン独奏による「間奏曲」 を移し、二人の パ·ド-ドゥによって愛の深まりを表現しています。
本来、このヴァイオリン独奏は皇帝専属のヴァイオ リン奏者レオポルドアウアーのために作曲されたもの。
アレクサンドル3世に対するチャイコフスキー 流の”おもてなし”です。

レジュメより

ピーターライト版の映像を一部鑑賞させていただきました。奏でていたヴァイオリンの音色がとても美しくうっとりしてしまいました。

ラローシ(チャイコフスキーの友人、 批評家)の回想(1895)

チャイコフスキーは、バレエにおけるリアリズムには我慢できな かった。
オペラは、現代の中流階級の日常の生活を表現すること に優れているが、
バレエはそれと異なり、 幻想的で、現実にはあ り得ず、
理解することも説明することも不可能なものの王国に 我々を連れ去る。
その根源的な芸術表現とは神話なのだ。 = →日常性を払拭、音と舞踊と視覚が融合した純粋な美の世界こそ バレエ「眠れる森の美女」の魅力。

レジュメより

言葉のない芸術、ほんのひとときかもしれないけど突き詰めたのが 「眠れる森の美女」最高傑作のバレエとおっしゃったのを聞いて 増々楽しみになりました。。


クリエイティブスタジオの入り口付近の目印

アートプログラム2020 バレエ「眠れる森の美女」見どころ・聴きどころ」


今回は11/14のバレエ「眠れる森の美女」を鑑賞しに行くので、
事前に見どころ聴きどころをレクチャーしてもらい、
より一層楽しめるための準備のため参加することにしました。

  
昨年の千葉教授のオペラが非常にわかりやすく、
当日の楽しみ方をいろいろ伝授いただきとても楽しめたので、今回も応募しました。


芸術作品が身近に感じ、芸術作品に多くの方が触れられる機会を提供してくれる良い企画だと思います。  

  
一緒に参加した娘はバレエを鑑賞するのが初めてですが、   
今回の千葉教授のアートプログラムに参加し、当日が楽しみでワクワクすると言っていました。

千葉 潤教授(東京藝術大学大学院音楽研究科後期博士課程満期退学、ロシア国立モスクワ音楽院大学院音楽理論科修了 2003 年に芸術学カンディダート 取得 専攻は音楽学・現代ロシア音楽)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください